年収の壁とは?配偶者控除と配偶者特別控除の違い

金融

「年収の壁」という言葉をニュースで見かけても、「結局、いくらまで働けば損しないの?」と迷う人は多いはずです。実は、壁と呼ばれる金額は一つではありません。所得税がかかり始める金額、配偶者控除が使えなくなる金額、社会保険の扶養から外れる金額は、それぞれ別の仕組みで決まっています。

この記事では、国税庁が公表している情報をもとに、所得税まわりの「壁」を整理します。令和7年分(2025年分)と、令和8年分(2026年分)以降で数字が変わる点も、表で比べながら確認します。※社会保険の壁は別の基準のため、最後に確認先だけまとめます。

電卓
電卓(写真:Coyau/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)

「年収の壁」は、何の壁なのか?

年収の壁は、収入が一定額を超えると、税金や社会保険料の負担、または家族の控除や手当の扱いが変わる境目を指す通称です。法律用語ではないため、ニュースや記事によって、指すものが違うことがあります。まず、壁を次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 所得税がかかり始める壁:自分自身に所得税が発生するかどうか
  • 配偶者控除・配偶者特別控除の壁:働く配偶者の収入によって、もう一方の配偶者の税額が変わるかどうか
  • 社会保険の壁:健康保険や年金で、扶養に入れるか、自分で加入するか

この記事で詳しく扱うのは、上の1つ目と2つ目です。3つ目は、勤務先の規模や加入している健康保険によって条件が異なるため、後ほど確認先を紹介します。

所得税がかかるのは、いくらから?(令和7年分と令和8年分以降)

給与収入だけの人の場合、所得税は「収入から給与所得控除を引き、さらに基礎控除などを引いた残り」にかかります。国税庁の情報では、令和7年分は給与収入160万円以下なら所得税がかからない(給与所得控除65万円+基礎控除95万円)とされています。

令和8年分以降は、給与所得控除の最低保障額と基礎控除が見直され、給与収入178万円以下なら所得税がかからない(給与所得控除の最低額74万円+基礎控除104万円)と案内されています。

項目 令和7年分 令和8年分以降
所得税がかからない給与収入 160万円以下 178万円以下
給与所得控除の最低額 65万円 74万円
基礎控除(合計所得が一定以下の場合) 95万円 104万円

※基礎控除は、合計所得金額に応じて額が変わります。上の表は、国税庁が例示している水準での比較です。ご自身の控除額は、国税庁の「基礎控除の見直し」のページで確認してください。

また、令和8年分以降の見直しの施行は令和8年12月1日とされており、会社員の年末調整などで、勤務先から案内が来る場合があります。

なお、住民税がかかり始める金額は、所得税とは別に市区町村が決めます。国税庁のページには記載がないため、お住まいの市区町村のサイトや窓口で確認しましょう。

配偶者控除と配偶者特別控除は、何が違う?

配偶者控除と配偶者特別控除は、どちらも「配偶者の所得に応じて、控除を受ける人(主に、収入が多いほうの配偶者)の所得から一定額を差し引く」制度です。違いは、配偶者の所得がどのくらいかです。

制度 令和7年分 令和8年分以降
配偶者控除(配偶者の合計所得) 58万円以下(給与収入123万円以下) 62万円以下(給与収入136万円以下)
配偶者特別控除(配偶者の合計所得) 58万円超133万円以下 62万円超133万円以下(給与収入136万円超207万円未満)

どちらも、控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円以下であることが条件です。配偶者特別控除は、控除を受ける本人の所得が900万円以下なら最大38万円、950万円を超え1,000万円以下だと最大13万円というように、本人の所得に応じて控除額が段階的に小さくなります(詳細は国税庁のタックスアンサー No.1195)。

「配偶者の合計所得」と「給与収入」は別の数字です。給与だけの人は、給与収入から給与所得控除を引いた金額が所得になります。たとえば令和7年分で給与収入が123万円なら、所得は58万円になる、という関係です。

「壁を超えたら手取りが減る」は本当?

配偶者特別控除は、配偶者の所得が増えるにつれて控除額が段階的に小さくなる仕組みです。そのため、少し超えただけで世帯の手取りが急に大きく減る、ということは起きにくくなっています。ただし、次の点には注意が必要です。

  • 配偶者控除の対象から外れ、配偶者特別控除に切り替わる(控除額が変わる)
  • 勤務先の「配偶者手当」の支給条件が、税制とは別に決められている場合がある
  • 社会保険の扶養から外れると、保険料の負担が発生する場合がある

特に配偶者手当は、会社ごとに基準(収入の上限など)が違います。税制の改正があっても、会社の制度は自動では変わらないため、人事・総務の窓口で確認するのが確実です。

実際の確認の流れ:3ステップ

「自分はいくらまで働けるのか」を考えるときは、次の順番で確認すると迷いにくくなります。

  1. 今年の見込みの給与収入を出す(賞与・交通費の扱いは勤務先に確認)
  2. 所得税の壁:国税庁の表で、自分の給与収入が壁より下かを確認する
  3. 配偶者控除・配偶者特別控除:配偶者の合計所得がどの区分に入るかを確認する
  4. 勤務先の配偶者手当、健康保険の扶養条件を、それぞれの窓口で確認する

見込みの収入は、年の途中で変わることもあります。年末が近づいたら、残りの勤務日数やシフトを見ながら、再計算しておくと安心です。年末調整や確定申告の流れは、「年末調整とは?」と「確定申告の基本」も参考にしてください。

社会保険の壁は、どこで確認する?

健康保険・厚生年金の扶養や加入の基準は、所得税の基準とは別に定められています。勤務先の規模、働く時間、加入している健康保険組合などで条件が変わるため、勤務先(人事・総務)、加入している健康保険、年金事務所で確認するのが確実です。国民年金や公的年金の全体像は、「公的年金の基本」でも整理しています。

よくある失敗と、その防ぎ方

  • 「年収」と「給与収入」「合計所得」を混同する:控除の判定は所得ベースのものと収入ベースのものがある。どの数字で判定されるかを確認する
  • 令和7年分と令和8年分以降の表を混ぜて使う:年分ごとに基準が違う。いま調べている年分に合う表を使う
  • 家計の話だけで税と保険を一緒に判断する:税、社会保険、勤務先の手当は別々の基準
  • ネットの古い記事の数字を使う:制度は改正される。国税庁のページの更新日を確認する

よくある質問

パートで働く場合、結局いくらまでなら安心ですか?

単純な答えはありません。所得税、配偶者控除、住民税、社会保険、会社の手当で、それぞれ基準が違うためです。まず国税庁の表で所得税と控除の基準を確認し、そのうえで勤務先と健康保険の条件を確認しましょう。

年末に収入が超えそうなときは、どうすればいいですか?

勤務先にシフトや賞与の見込みを確認し、超えた場合の影響を事前に計算しておきましょう。配偶者特別控除は段階的に変わるため、超えた場合の控除額を確認してから働き方を決めると安心です。

住民税の壁は、国税庁のページで分かりますか?

国税庁のページには記載がありません。住民税は市区町村が課税するため、お住まいの自治体のサイトや窓口で確認してください。

出典(公式情報):国税庁 タックスアンサー No.1800、国税庁 No.1190、国税庁 No.1195、国税庁 基礎控除の見直し(最終確認日:2026年10月23日)

まとめ:壁は3種類。年分と基準を確認してから決める

年収の壁は、所得税、配偶者控除、社会保険の3種類に分けて考えると整理できます。所得税は令和7年分と令和8年分以降で基準が変わり、住民税や社会保険、会社の手当は別の窓口で確認が必要です。国税庁の表を土台に、勤務先と自治体の情報を重ねて判断しましょう。

最終確認日:2026年10月23日。制度・金額・ルールは変更されることがあります。最新の情報は、必ず上記の公式サイトでご確認ください。

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買・契約を推奨するものではありません。最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。

※本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。