贈与税の基礎知識|110万円控除と相続時精算課税の違い

金融

親からの援助や、家族への資金のやりとりで、「いくらまでなら税金がかからないの?」と気になる人は多いはずです。贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの課税方法があり、どちらを選ぶかで税金の考え方が大きく変わります。

この記事では、国税庁のタックスアンサー(No.4402、No.4409)をもとに、贈与税の基本を整理します。※個別の事情で結果が変わるため、金額が大きい場合は、税務署や税理士に相談してください。

電卓
電卓(写真:Coyau/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)

贈与税とは?だれが納める?

贈与税は、個人から財産をもらったときに、もらった人にかかる税金です。税金を納めるのは、あげた人ではなく、もらった人です。

贈与税には、毎年の贈与について計算する「暦年課税」と、一定の条件を満たした場合に選べる「相続時精算課税」があります。一度に全部を理解しようとせず、まずは暦年課税の基本から見ていきましょう。

暦年課税:基礎控除110万円とは

暦年課税では、1年間(1月1日から12月31日)にもらった財産の合計額から、基礎控除110万円を差し引いて、税額を計算します。国税庁の情報では、1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず、申告も不要です。

1年間にもらった財産の合計 贈与税 申告
110万円以下 かからない 不要
110万円を超える 税額が発生する 必要(翌年の2月1日から3月15日まで)

ここで気をつけたいのは、「あげた人ごと」ではなく、「もらった人が1年間にもらった合計」で判断される点です。複数の人から贈与を受けた場合は、合計して判断します。

生活費や教育費は、贈与税がかかる?

夫婦や親子などの間で、生活費や教育費として必要な金額を、必要なときに必要な分だけ渡す場合は、贈与税がかからない財産として扱われます。ただし、渡したお金を、生活費や教育費にあてずに、貯蓄や投資に回すと、贈与税の対象になることがあります。

非課税になる財産の範囲は、国税庁のタックスアンサー No.4405 に示されています。判断に迷うときは、そちらを確認してください。

相続時精算課税:選ぶと何が変わる?

相続時精算課税は、贈与のときには軽い税負担で財産を受け取れ、その財産は将来の相続のときに、相続財産に加算して相続税で精算するという仕組みです。

項目 暦年課税 相続時精算課税
基礎控除 年110万円 年110万円(令和6年以降の贈与)
特別控除 なし 合計2,500万円
税率 超過累進税率 特別控除を超えた分に一律20%
相続のとき 原則、贈与した財産は加算されない場合が多い(一定期間内の贈与は別の扱い) 贈与した財産が、相続財産に加算される

国税庁の情報では、相続時精算課税を選ぶには、最初の贈与を受けた年の翌年に「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。一度選ぶと、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻せません(撤回不可)。選ぶ前に、よく検討することが大切です。

計算の例:毎年1,000万円ずつ贈与を受けた場合

国税庁のタックスアンサーには、相続時精算課税の計算例が示されています。たとえば、父から毎年1,000万円の贈与を受けた場合、次のように計算されます(説明のための例)。

年 累計の贈与額 状況
1年目 1,000万円 基礎控除と特別控除の範囲内で、納税なし
2年目 2,000万円 特別控除(2,500万円)の範囲内で、納税なし
3年目 3,000万円 特別控除を超えた分に20%がかかり、税額は34万円

このように、特別控除(2,500万円)を超えた分に、一律20%の税率がかかる仕組みです。ただし、贈与された財産は、相続のときに加算されるため、税金が「ゼロになる」わけではない点に注意しましょう。

申告と納付の流れ

贈与税の申告が必要になった場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、税務署に申告します。納付も、同じ期限までです。

  1. 贈与を受けた財産の内容と金額を整理する(現金、不動産、株式など)
  2. 基礎控除を引いて、税額を計算する
  3. 申告書を作成し、税務署に提出する(e-Taxも可能)
  4. 納付期限までに納める

国税庁の情報では、納付が難しい場合、税額が10万円を超えるときは、一定の条件で、分割して納める「延納」を利用できる場合があります。申告が必要なのに、しなかった場合は、加算税や延滞税がかかるおそれがあります。

関連する内容は、子ども名義の口座と贈与税、確定申告の基本でも解説しています。

よくある失敗と、その防ぎ方

  • 複数年にわたる贈与を、年ごとの判断だけで済ませる:まとめて判断される場合があるため、継続的な贈与は税務署や税理士に相談する
  • 口座名義だけ変える:実質的に贈与にあたる場合がある
  • 相続時精算課税を、よく考えずに選ぶ:撤回できないため、慎重に
  • 110万円以下だから何もしない:記録を残しておくと、後で説明しやすい

贈与を受ける前に確認したいチェックリスト

  • もらうものは現金か、不動産・株式などか(評価の方法が変わる)
  • 1年間にもらう合計は、複数の人からの分も含めて110万円を超えるか
  • 生活費や教育費など、非課税の財産に当たるか(No.4405を確認)
  • 相続時精算課税を選ぶ場合、贈与者の年齢や、受贈者との関係などの条件を満たすか
  • 申告の期限(翌年2月1日から3月15日)に間に合うか

相続時精算課税は、選べる贈与者と受贈者に条件があります。条件の詳細は、国税庁のタックスアンサー No.4409 で確認してください。

家族間でお金を渡すときの考え方

家族どうしでも、お金の移動が「贈与」にあたるのか、「貸付」や「生活費の援助」にあたるのかで、税金の扱いは変わります。口約束だけでは、後から説明が難しくなります。贈与であれば、贈与の事実が分かるように、いつ・誰に・いくら渡したかを記録しておきましょう。

お金の管理や、家計全体の見直しは「[[household-budget-fixed-costs|家計の固定費の見直し方]]」も参考にしてください。大きな金額の贈与や、相続を見据えた贈与は、税理士などの専門家に相談するのが安心です。

よくある質問

親から110万円をもらったら、申告は必要ですか?

1年間にもらった合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要です。110万円を超える場合は、申告が必要です。

相続時精算課税は、後から暦年課税に戻せますか?

国税庁の情報では、一度選ぶと撤回できず、その贈与者からの贈与は、以後すべて相続時精算課税の対象です。

住宅購入の資金を親から援助してもらう場合は?

住宅取得等資金の特例などがある場合があります。国税庁のページで、最新の制度を確認してください。

出典(公式情報):国税庁 タックスアンサー No.4402、国税庁 No.4409(最終確認日:2026年10月23日)

まとめ:110万円の基準と、選択の前の確認が大切

贈与税は、もらった人が納める税金です。暦年課税では年110万円まで基礎控除があり、超えると翌年2月1日から3月15日までに申告が必要です。相続時精算課税は撤回できないため、将来の相続も含めて、慎重に検討しましょう。

最終確認日:2026年10月23日。制度・金額・ルールは変更されることがあります。最新の情報は、必ず上記の公式サイトでご確認ください。

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買・契約を推奨するものではありません。最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。

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